日弁連の任意後見の学習会に参加して
私自身は、弁護士法人岡山パブリック法律事務所に在籍していたとき、比較的多くの法定成年後見事件に関わっていました。しかし、在籍中任意後見事件はしたことがありませんでした。
平成30年2月3日(土)に弁護士会館で行われた「成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会(第5回)」では、「だれもが安心して老いることができる社会に向けて-任意後見制度の利用促進を考える-」という勉強会が行われたのでこれに参加してみました。
現代社会では、核家族化の進行によって子供には頼れない人や子供を産まない選択をする夫婦、生涯独身の方などが増えていて、今は元気なのだけれども、将来、認知症などになって判断能力が落ちたとき、頼るべき人がいない。
そんなときのために任意後見制度の活用が期待されているのですが、統計上は、ほとんど利用されていないのが実態とのことでした。
その利用を阻害している問題点は概ね以下のようなものと指摘されていました。
①法定後見制度と比べて認知度が低い。
②適切な任意後見人が足りない。適切な親族や専門職がいない。マッチングしてくれる団体もない。
③法定後見制度のような成年後見利用支援事業のような費用を補完する制度がない。親族が任意後見人になっても必ず監督人に報酬を払う必要があり、専門職が任意後見人になった場合には、監督人と二重に報酬の負担が生じる。価格設定が難しい(報酬基準が確立されていない)。お金持ちしか利用できない。
④特に比較的多い類型とされている「移行型」の場合、本人の判断能力が不十分な状態になっても受任者が任意後見監督人選任の申立てをしないまま財産管理を継続し、監督する機関がなく不正が生じやすい(統計上も発効している割合は、わずか6.3%程度しかないとのことでした)
⑤代理権の範囲の拡張や縮減ができないし、任意後見人の変更や追加ができない。報酬変更もしずらい。
確かに、メリットはある制度と思いましたが、現状は、かなり使いずらい制度であって、相当に改善しないと利用件数は伸びていかないのではないかと感じました。