穏やかに生きる
人の心というのは、どうしてこうも落ち着かないのだろうと思ったことがありませんか。ひとつのことに考えを集中するというのは、結構、難しくて、こっちに行ったり、あっちに行ったり・・・。何か好きなことをしているときとか、仕事で集中しているときなどを除けば、なかなか集中できない。仕事や生活、人間関係での悩みで、いろいろなことを考えてしまって、考えがまとまらない。ちょっと嫌なことがあると、いつまでもそのことを考えてしまう。
そんなとき、少しだけ自分を落ち着かせて、穏やかさを取り戻すのに(個人的には)役に立った本をご紹介します。
「あなたがあたえる 大富豪ピンダーの夢をかなえる5つの秘密」ボブ・バーグ+ジョンディビッド・マン著 木村博江訳 文藝春秋
(「あたえるひとがあたえられる」という邦題で別の訳者、他の出版社からも出ているようです。)
この本は、表題からすると競争社会でいかに他人を出し抜いて勝利者になるか、といったようなことが書かれているように思われるかもしれませんが、実際は、「生き方」や「考え方」を訴えているように思います。
「奪い合う、競い合うという」競争の観点ではなくて、「与える」というまるで真逆の観点から書かれています。
たとえば、「相手の期待を超えて、受け取ったもの以上のものを、どれだけの人に与えられるのか」、「Win-Win(ウィン-ウィン)ではなくて、100%相手のために気を配る、100%相手の利益を優先させる」といったような、通常、ちょっと受け入れがたい内容のことが書かれています。
「与える」ことが、どうして「桁外れの」お金持ちになることに繋がるのか、どうして「桁外れの」夢をかなえることに繋がるのか。それは、実践した人、体験した人でないと理解できない内容です。だから、この本は、実践することを求めています。
この本の内容は、さらに、「実際に売っている(与えている)のは、商品ではなくて、本当は自分自身であって、どんな人であっても本当の自分こそが最高の贈り物である」ということを指摘した上で、最後に「与える」という行為が、巡り巡って、自分のところにやってくるので、「これを素直に受け取る。」「受け取る人がいないと与えることもできない」というある意味逆回りではありますが、当然といえば当然の結論で締めくくられています。
この本を読んだとき、私は、二宮金次郎(尊徳)先生の「たらいの水」の例え(たらいの中の水を引き寄せようとすると逃げていくが、相手に押しやると自分のところにやってくる)を思い出しました。
人間社会で生きることは、主として人との係わりと思いますが、人と係わったときに、「この人に自分は何を与えられるだろうか」と考えていると、心が落ち着いてきて、穏やかな気持ちになれるような気がします。
薄い本で、しかも物語形式なので、すぐに読めると思います。内容も面白いので、お勧めの本です。