ベーシックインカムという考えについて
ベーシックインカムという考えについて
「ベーシックインカム」という考え方は、政府が国民全員に対して生活に必要な最低限のお金等を給付する制度などと定義されています。要は、生活や生存と「仕事」を切り離す考え方なのだと思います。
この考え方自体は、比較的古くからあったようですが、最近まで、それほど話題にはされてこなかったようです。その理由には、様々なものがあると思いますが、「財源の問題」や「お金持ちにも一律支給するのはいかがなものか」、という考えなどもあったようです。
一般的には、ベーシックインカムは、最低限の生活に必要な収入を一律無条件で支給するという単純な制度にすることで現状の社会保障制度に対する行政上のコストを削減するメリットが指摘されており、市場原理そのものを否定するわけでもないので資本主義的な発想を否定するものでもないとされています。他方で、「したくない仕事をする人がいなくなってしまう」との指摘もあるようです。
ところで、近時、この考え方が注目されてきているのは、AI(人口知能)の進化により、従来型の仕事の多くが機械に奪われ、単純労働だけでなく、知的労働なども含めた失業が生じるのではないか、という危機感からのようです。
このベーシックインカムは、現実に、複数の国で実験が行われており、近い将来実現する国家も出現すると言われています。
私は、生活に必要な最低限のものについては、「仕事」とは切り離した方が良いのではないかと思っており、ベーシックインカムという考え方が指摘する基本的な発想やこの制度を採用した際に生じうる多くのメリットには、非常に興味があります。
したがって、このベーシックインカムという考え方には基本的に賛成なのですが、少し気になる点があります。
すなわち、このような社会を根底から変える可能性のある制度は、一部のエリートと呼ばれる人が「危機感によって」上から押し付けるべきではなく、むしろ、社会を底辺から支える人々が、自ら「生き方」や「仕事に対する考え方」を変え「自分の選択として」、いわば下からの提案で行われるべきなのではないか、という気がしているのです。上からの押し付けでは、やはりうまくゆかないのではないかという気がしています。また、国家という(本当はあいまいな枠組み)ものを過信することも少し気になる点です。
ただ、そうは言っても、現状のままの資本主義社会が維持できるとは思えず、現状の社会保障制度が妥当であるとも思えないので、このベーシックインカムという考えは非常に興味深い制度であることは間違いないと思っています。