面会交流と間接強制(1)
最高裁平成25年3月28日第1小法廷決定(民集第67巻3号864頁)は、「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合」には間接強制が認められるとしています。
この事例では、具体的には以下のような定めがされていました。
① 面会交流の日程等について、月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とすること
② 面会交流の方法として、長女の受渡場所は、抗告人自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときは、JR甲駅東口改札付近とすること、抗告人は、面会交流開始時に、受渡場所において長女を相手方に引渡し、相手方は、面会交流終了時に、受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこと、抗告人は、長女を引き渡す場面のほかは、相手方と長女の面会交流には立ち会わないこと
③ 長女の病気などやむを得ない事情により上記①の日程で面会交流を実施できない場合は、相手方と抗告人は、長女の福祉を考慮して代替日を決めること
④ 抗告人は、相手方が長女の入学式、卒業式、運動会等の学校行事(父兄参観日を除く)に参列することを妨げてはならないこと
これに対して、同日同じ最高裁第1小法廷決定で間接強制を否定した事例(集民 第243号271頁)では、
① 面会交流は、2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが、最初は1時間程度から始めることとし、子の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする
② 監護親は、上記(1)の面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で子を非監護親に会わせ、非監護親は終了時間に同場所において子を監護親に引き渡すことを当面の原則とするが、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、監護親と非監護親間で協議して定める
などとなっていました。
最高裁は、このような調停条項では、面会交流の大枠を定め、その具体的な内容は、抗告人と相手方との協議で定めることを予定しているものといえるので、給付が十分に特定されているとはいえず、間接強制決定はできないと判断しています。
同様に、同日同じ最高裁第1小法廷決定で否定された事例(集民 第243号261頁)は、
面会交流の頻度等につき一箇月に2回、土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする旨定められているが、この引渡しの方法については何ら定められていないなど判示の事情の下では給付が十分に特定されているとはいえない
として間接強制決定を否定しています。
これらの最高裁判例を前提にすると、「不履行が予想される面会交流」の債務名義を得るにあたっては、「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているか」に注意をする必要があるということになります。