免責不許可事由があったら免責されないのか
通常、破産手続き開始の申立てをする目的は、免責許可を得ることにあります。「免責」とは、法的には支払いをする責任が消滅することです(あらかじめ、免責許可決定後に、弁済を約束するなどは免責の趣旨に反し無効とされる可能性があります。)。
他方、破産法は、不誠実な破産者の免責を許可しない趣旨で免責不許可事由を規定しています(252条1項)。
私は、今まで、相当数の個人の自己破産事件を処理してきましたが、実際に破産に関する相談を受けていると、免責不許可事由があるのではないか、と思われる事案が結構あります。過大な投機的な投資、高額の飲食代(飲み屋代)、ギャンブル(パチンコ、競馬、競艇その他)などは、よく目にするところですし、場合によっては、詐欺的な行為ではないかと思われるようなこともないわけではありません。
ところで、このような免責不許可事由があるとき、「免責」は認められないのでしょうか。
以前、倒産法が専門ではない大学の先生とお話をしたとき、「免責不許可事由」があると、(例外として裁量免責の規定はあるものの)免責は難しいのではないかと言われたことがあります。
しかし、統計では、免責不許可決定の割合は極めて低く1%もありません。
私の今までの経験でも、裁判所から免責不許可事由の存在を指摘されたことは何度もありますが、結果として免責が不許可になったことはありません。反省文を書いてもらったり、破産に至る事情を詳細に報告したり(通常、詐欺的な行為をしたと思われる人も、なんらかの事情から巻き込まれてしまったというようなことが多いです。)、破産状況と関連する精神的な疾患を指摘する診断書を提出したりなどして、免責許可をいただきました。
個人的には、重要なのは、裁判所に対して、誠実に破産に至る経緯を説明し、その上で、今回のことについては、反省しているので、二度とこのようなことがないようにしたいと伝えることではないかと思っています。
私が破産事件を受任するスタンスとしては、有利なことも不利なこともできる限り明らかにした上で、それでも免責をお願いしたいということで裁判所には伝えるということです。