詐欺的被害に遭わないための一考察
人生は決断・判断の連続です。妥当な決断のためには、決断の前提となる情報をきちんと理解していることが必要ですが、往々にして理解不十分なまま決断せざるを得ないことも多いです。情報に誤りや理解不十分な部分があると、判断自体、誤る可能性が高くなります。
オレオレ詐欺(さくらサイトもそうですが)は明らかに犯罪ですが、それに限らず、消費者被害に関する相談を、法律家として聞いていると、瞬間的に「おかしい」「何か胡散臭い」「詐欺ではないか」と思うことが良くあります。
しかし、当事者としては、(少なくともその時)それを見破ることができない。
なぜでしょうか。今までの自分の相談などを振り返って、詐欺的被害に遭わないために注意するべき点を少し考えてみました。
これは正当な営業活動との境界線を考える上でも重要と思います。以下に詐欺的行為の特徴をまとめてみました。
1 情報不足が背景にある
これは、詐欺的行為の特徴というよりは、だまされる側の重要な背景原因です。自分があまり知らない分野、関与したことがない分野の出来事だと、相手方から得々と話を聞かされると、「そんなこともあるのかな」などと安易に思ってしまうことがあげられると思います。そして、このことがだまされることの重要な素地、背景にあると思います。
2 情報源の正当性を装う
詐欺的行為の特徴のひとつは、情報源の正当性を指摘し、これを装って、だから、本当のことなのだと思いこまされることです。権威のある方の名前を出したり、有名人の名前を出したり、公的機関の名前を出したりということがよくあります。
最近では、大新聞でも事実をどこまで正確に報道しているのか怪しいこともあります(「偽ニュース」などが話題ですよね。)。無意識のうちに、この人の言っていることだから、間違いないであろう、公的機関が言うことだから間違いないであろうと「思いこまされ」てしまうのです。
オレオレ詐欺やそのほかの消費者被害の相談でも、警察やら、弁護士やら、あるいは業界で権威がある方などが出てくるのもそのような意味からだと思われます。
3 多角的な情報であるかのように装う
2と類似していますが、多くの方が、書面や口頭などで賛成していると言われると、これまた、本当のことではないかと思ってしまうという点があると思います。しかし、これも装っているだけで実際は限られた情報源というがあります。
全く無関係のところから、視点を変えて情報に接することが重要だと思います。ひとつの情報源(例えば、電話口や訪問員)の中で、仮に複数の人物が出てきたとしても同じ情報源の可能性があります。また、複数の人も結局、元をたどると同じ情報源ということもあり得ますので注意が必要です。
4 冷静に考える時間を与えない
正当な営業との境界線でもあるように思いますが、とにかく、決断を急かすのが詐欺的行為の特徴です。私は、正当な営業というのは、相手方に、きちんと考える時間を与えるものだと思います。ところが、そうではなく、「今でなければ値段が高くなる」とか、「あなただけの特別な価格である」とか、「他の人には言わないでください」とか、「今日だけ、今だけ、今、即決しなければ駄目です」というのは、相当に怪しいと思って間違いありません。
5 実際に試すことができない、あるいは試すことができるかのように装う
実際に試してみないとわからないということも多々あります。しかし、試すことができない。あるいは、この「試す」ことを逆手に取るやり方もあるようです。つまり、一見お試し「だけ」のように思わせて、実は、お試しの契約をそのままにすると高額の本契約をさせられることになったり、解約ができないかのような内容になっていたりすることもあるようです。
法律的に事後処理をどうするか、というのはともかく、詐欺的被害を受けないための事前の予防策としては、前記のような点を考えてみるのが一つ有効な方法ではないかと思います。
すなわち、①この問題は自分があまり知らない分野の事柄ではないか、②本当にこの情報源は正当なのだろうか、③この問題について、他の人はどのように見ているだろうか、④すぐに決断を迫っていないだろうか、⑤試すことができるのであろうか、あるいはそのお試し後再度決断する機会を与えられているだろうか、といった点です。
そして、もし、怪しいなと思ったときには、少なくとも「一晩」考えるということが重要だと思います。